NIKE AIR PRESSURE

今回はNIKEが誇る大失敗モデル、エアプレッシャーについて。

 

俺がこの靴を知ったきっかけはNIKE社の歴史が書いてある本に「リーボックのポンプの対抗機種として世に送り出し、惨敗した」と記載されていたことからでした。

しかし、この靴、その後バックトゥザフューチャーのエアマグの原型になったり、なんと奇跡的に復刻されたりとNIKE珍種シリーズでは異例の高待遇モデルであるにも関わらず国内にこの靴に関する資料がほとんどないためここで私の記憶にある範囲で紹介します!

 

 

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発売は1989年、リーボックのTHE PUMPに対抗するためにNIKEが開発したポンプシステム搭載バッシュ。

とは言え、この靴を「ポンプシステム搭載バッシュ」というにはいささか疑問符がついちゃうんです。

なぜならこの靴はポンプが外付けで、エアスプラッダーが靴に搭載されているだけの靴だから。

つまり、靴に内蔵された風船に外付けポンプで空気を入れるという機能。

 

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また、89年当時に存在していた機能全部入りで、非常にゴテゴテしたデザイン。

その多機能さ故に重量は重く、かかとに搭載されたポンプシステムを収容するTPUパーツが足首の自由な動きを阻害して、実際のバスケでは使いにくい靴。

 

そう。多機能最先端モデルではあっても、使えない靴だったのです。

 

そして極め付けはその箱。

半透明のプラスチック製の箱で肩掛けストラップが付いていて、上蓋の裏には外付けポンプを収納するスペースがある。

これにより、コレクターは箱で積み重ねていても一目でどこにこいつがいるか発見できるというわけです。

このように贅沢装備てんこ盛りのため値段は約300ドルと超がつく高額な定価設定w

 

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と、特徴を挙げたが、当時の評判はどうだったのかと言うと当然のように全く売れず、ホリデーシーズンに投入されリーボックのポンプと真っ向勝負したが売り上げで3倍以上の差をつけられての敗退という惨憺たる結果に。

さらにポンプシステムの故障が多い、外付けのポンプを紛失したら昨日が使い物にならないというクレームの中で生産終了。

 

そのため、この靴は1デザイン1色の単発デザインで且つ直接の後継機なしという異例にして孤高のバッシュです。

 

さらにこの靴の生みの親、ティンカーハットフィールドはコレクターの家で話をした際に、目に入る位置に置いてあったこの靴の箱を見て

「その靴を私の目の届かない所に置いてくれ。」

とまで言う始末。

 

そして、この靴はミッドソールとかかとにTPUを使っているため時が経つと踵のポンプシステムが加水分解して見るも無残な姿に。

おそらくオリジナルでポンプシステムに加水分解が生じない状態のものは1足も現存していないのではないでしょうか。

 

私は10年以上前にこの靴の存在を知り、その斬新なデザインに衝撃を受け探し回ったが完品のポンプが使えるものを1足も見つけることができず、半ば手に入れることを諦めていました。

いつかは履きたいと思いながら過ごしていたある日、なんと奇跡的に今年の頭に復刻!

 

NIKEがどんな気の迷いかわからないがこの機を逃したら一生手に入れられないだろうと、36000というびっくり価格(発売当時の定価と同じはず)であったがなんとか確保。

 

実際手に入れて履いた感想だが、やはりアッパーは様々な機能を搭載しているだけあってフィット感とふわふわ感があり、補強がなく開放的な爪先はゆったりとしていて感覚的にはAJ6やAJ7のようなハラチ搭載ジョーダンのような感覚。

しかしやっぱり履くと感じるのはポンプシステムの異様な存在感。

硬く、重く、足首の自由はほぼないです。

 

こんな、出来損ない感溢れるエアプレッシャーですが、私が10年以上探し続けただけありやはりデザインは可愛い。

 

もう復刻されることはないであろうこのモデル、大事に履いていきたいです。